異物を飲み込んだ時
食べてはいけない食べ物でない物(ゴム、スポンジ、クリップ等々数知れず)から食べ物でも桃の種など犬猫では非常によく遭遇します。
そんな時の処置としては
1.催吐処置(強制的に吐かせる)
2.内視鏡
3.開腹手術
となります。これら3つの順番や最善の方法を考えます。
1番目の催吐処置について
これは通常何らかの薬等を使用して嘔吐を誘発させます。通常はトラネキサム酸の静脈注射(猫での効果は低い)やドミトールという麻酔薬、吐根シロップという吐かせるための薬(日本にはない)、アポモルヒネなどを使われる事が多いかと思います。とは言え、副作用や効果等考慮するとトラネキサム酸の使用がメインになり、規定量を静脈内に投与すると大抵5分、せいぜい10分以内に嘔吐が見られ、嘔吐も持続しないため切れが良く使いやすいです。
やってはいけない催吐処置
先の尖った物(楊枝、針、ガラス片など)は胃だけでなく食道も傷つける可能性があるので催吐処置はおすすめできません。
食塩:
吐き気が止まらなかったり、塩中毒を起こします。
オキシドール:
私が獣医師になった頃は今のように内視鏡機器が動物病院では一般的では無かったため知らずに使っていたという面があったと思われますが、オキシドールを飲ませた後の胃の粘膜の状態は酷い事になっています。ネットでオキシドールによる処置の仕方を書いてあるのを見たことがありますが、決してやってはいけないと思います。
催吐処置で注意はもし運悪く食道で異物が止まってしまうと内視鏡が無ければ開腹手術より難易度が100倍に上がってしまう手術になるので、必ず内視鏡が使える状態で行うことが望ましいです。
2.内視鏡処置
これは経験ある方も多いと思いますので分かると思いますが、口から内視鏡を挿入して異物をつまみ出してきます。ただし人では全身麻酔の必要はありませんが、動物では必ず全身麻酔が必要になります。
ただし注意が必要で、「胃に入ったんだから出るだろう!」と思われがちですが、胃の入り口は入るときはスムースに入っても出すときは引っかかりやすいのです。また紐状の物で胃から腸の方までつながっている場合は無理に引っ張ってしまうと腸が裂けることもあります。またゴム製品やスポンジなどは胃酸でガチガチに堅くなってしまったりもします。
色々な異物に可能な限り対応できるように、通常の組織を取るためのバイオプシー鉗子だけで無く、掴むためだけの鉗子やバスケット鉗子など数種類が必要になります。
3.開腹手術
これは読んで字の如く全身麻酔下で開腹し、胃から肛門まで肉眼で確認することができます。ただ、これもオールマイティではなく、細かい物が胃の中にあった場合は胃を大きく切開するよりも内視鏡と組み合わせでやった方が回復的には良い場合もあります。
このように異物の処置は、動物の健康状態から飲み込んだ物など様々な状況を加味して行う必要があります。